【メーカー向け】WADAがTHCの今後の展望を公開!CBD製品のドーピングリスクは?

【メーカー向け】WADAがTHCの今後の展望を公開!CBD製品のドーピングリスクは?
【メーカー向け】WADAがTHCの今後の展望を公開!CBD製品のドーピングリスクは?

「CBD製品はどこまでTHCを除去したらドーピングのリスクを減らせるか。」

スポーツ市場でもCBD(カンナビジオール)製品が広まりを見せる今、気になるメーカーも少なくないのではないでしょうか。大麻の主成分である「THC(テトラヒドロカンナビノール)」の規制緩和の波はスポーツ界にも押し寄せており、WADA(世界アンチ・ドーピング機構)も今後のTHCの取り扱いに関する展望を公開しています。
今回は2023年度の禁止表国際基準の変更点の中で公開された展望を基に、CBD製品の取り扱いについて解説します。

なお当コラムは薬剤師監修のもと、サプリメント・化粧品などの製造・販売メーカーに対して、スポーツにおけるTHCのリスクの解説を目的としており、大麻をはじめとする違法薬物の所持・使用を一切容認するものではありません。 CBD製品の輸入、販売を検討されているメーカーは、厚生労働省の麻薬取締部がリリースしている以下の情報を遵守してください。
CBDオイル等の CBD 製品の輸入を検討されている方へ(厚生労働省 地方厚生局 麻薬取締部)

ドーピングにおけるTHCの現在の取り扱い

大麻の主成分であるTHCは「S8.カンナビノイド」の一例として2023年度の禁止表国際基準に明記されており、使用後の精神的な副作用や、何よりスポーツの精神に反することから、「競技会中にのみ」使用が禁止される成分です。(身体的パフォーマンス向上のデータはないとしていますが、精神面でのパフォーマンス向上の可能性については否定できないとWADAは発表しています。)

ゆえに規制緩和されたアメリカの一部の州を拠点とするアスリートでも、ドーピング違反となります。
しかし、2021年からは濫用物質(=大麻や覚せい剤など、社会活動で濫用される物質)に指定されたことで、仮にドーピング検査でTHCの陽性反応が出たとしても、パフォーマンス向上目的での使用ではないと証明できた場合、3ヶ月程度の出場停止にとどまるようになりました。

参照:2023年度禁止表国際基準(JADA和訳版)
参照:THCが禁止される理由について=(別表)The Summary of major modifications and explanatory notes S8.Cannabis
参照:世界アンチ・ドーピング規定(=CODE)10.2.4

CBD製品が疑われたドーピング騒動

CBDはTHCのもつ精神的な副作用が弱いことなどを理由に、2018年度の禁止表国際基準から除外されています。ただ同時に「CBD製品の中にはTHCなどのカンナビノイドの除去が甘いものがある」ということもあり、WADAはアスリートに対してCBD製品の使用について注意喚起もしています。

国内ではCBD製品が原因と断定されたドーピング違反は発生していませんが、2021年にはボクシング世界王者の井岡一翔選手がドーピングを疑われ、その際CBD製品が原因ではないかと一時騒がれました。

井岡一翔ドーピング禁止薬物検出問題がJBC結論次第で泥沼訴訟合戦に発展する危険性も(Yahoo!ニュース)
井岡選手「正直許せない」…JBC、ドーピング検査で「不手際」(読売新聞)

「THCで陽性になる濃度」を2023年度禁止表と同時に公開

「ではTHCは、どれだけ除去されていたらよいのか。」多くのメーカー、アスリートが気になる点だと思います。
そのTHCの基準について、WADAが2023年度禁止表国際基準の変更点の中で、興味深い発表をしました。

At present, the main psychoactive component of cannabis, delta9-tetrahydrocannabinol (THC), is prohibited In-competition and is reported as an Adverse Analytical Finding (AAF) by WADA-accredited laboratories when the urinary concentration- of carboxyTHC exceeds a threshold of 150 ng/mL with a Decision Limit of 180 ng/mL.

現在、大麻の主な精神活性成分である「デルタ9-THC」は競技会中では禁止されており、尿中濃度が150ng/mL(判定限界値180ng/mL)の閾値を超えるとWADA公認の試験所で有害分析所見(AAF )として報告されることになっています。

(別表)The Summary of major modifications and explanatory notes S8.Cannabis

This means that with the current threshold, Athletes most at risk of testing positive are those who have consumed significant quantities of THC close to In-competition Doping Control or are chronic users.

現在の閾値で陽性となる危険性が最も高いアスリートは、競技会前にTHCを大量に使用した人、または慢性的にTHCを使用している人です。

(別表)The Summary of major modifications and explanatory notes S8.Cannabis

つまり、THC除去に関する明確な基準の公開はないものの「陽性となる危険性が最も高いアスリートは、競技会前にTHCを大量に使用した人、慢性的にTHCを使用している人」という点から、メーカーが独自で行う検査でTHCの除去が確認できていたり、輸入時の検査もクリアできていたりするCBD製品であれば、THCでアスリートがドーピング陽性反応になるリスクは高くない、と言えることが分かりました。

ドーピングにおけるTHCの今後の展望

2023年度禁止表国際基準からもTHCは除外されませんでした。

ただ以前からTHCに関するルールの改定は行われてきており、2013年には、THCの尿中閾値が15ng/mLから「150ng/mL(判定限界値は180ng/ml)」にまで引き上げられました。そしてこの引き上げにより、2009年から2012年のTHCの年間平均陽性者数400〜500件あったのが、2021年には100件以下にまでなっています。

WADAは今後の改定の姿勢も見せていますが、日本をはじめTHCの使用を禁止している国が多く、データが集まらないことから、議論が長引くことを課題に挙げています。ただし、精神面でのパフォーマンス向上を否定できるデータが集まった際には、スポーツ界でも規制が大きく変わりそうです。

間違ったら危険!CBD製品をアスリートに提供するうえでのポイント

ここまでTHCの今後の展望をもとにCBD製品のリスクについて触れてきましたが、その他のリスクもあわせて整理していきます。

【CBD製品のリスク】

  1. CBD製品のTHCの残留
  2. CBD以外のカンナビノイド(CBN、CBGなど)の混入
  3. カンナビノイド以外のドーピング禁止物質が混入

「S8.カンナビノイド」に分類される成分でドーピング違反にならないのは、ルール上CBDのみです。つまり、CBD製品にTHC以外のカンナビノイドが混入した場合も違反になる可能性は否定できません。
また、サプリメントや化粧品は、複数の原材料を使用していたり、様々な工場で製造していたりするため、THC以外のドーピング禁止物質が含まれる可能性もあります。万が一CBD製品でドーピング違反となった場合、メーカーには以下の様な被害が想定されるでしょう。

ドーピング違反によるメーカーへの被害

【CBD製品に求められる対策】

そこで国内のCBD取り扱いメーカーがアスリートに製品を安全に提供するには、以下の「異物が混入していないことの証明」が求められてきます。

  1. THCやその他カンナビノイドの除去に関する結果の公開
  2. CBD製品のドーピング分析の結果公開
  3. GMPなどを取得した工場で製造

CBD製品メーカーであっても、アスリートに製品を安全に提供するにはJADAが公開するガイドラン(=スポーツにおけるサプリメントの製品情報公開の枠組みに関するガイドライン)に対応しなければ、ドーピング違反によるメーカーへの被害で解説しているような多額の損害賠償請求が発生する可能性が大いにあります。
「うちの対策は大丈夫?」と思ったら、お気軽にご相談ください。