薬剤師が解説!「大麻取締法及び麻薬及び向精神薬取締法の一部を改正する法律」のポイント

2024年12月12日に「大麻取締法・麻薬及び向精神薬取締法」の一部が改正されました。
今回は、改正された3つのポイントとカンナビジオール(以下、CBD)製品の取扱いについて解説していきます!
改定の3つのポイント
大麻草の医療や産業における適正な利用とその濫用によるリスクを回避するために3つの内容が制定されました。
1:大麻草から製造された医薬品の施用等を可能とするための規定の整備
2:大麻等の施用罪の適用等に係る規定の整備
3:大麻草の栽培に関する規制の見直しに係る規定の整備
それでは、各項目について見ていきましょう。
大麻草から製造された医薬品の施用等を可能とするための規定の整備
従来、大麻は医療上の有用性がないと考えられていましたが、大麻草から製造された医薬品においては、米国のカリフォルニア州で1996年に医療用大麻として認められ、2016年には住民投票により嗜好用大麻としても合法化されました。現状では、嗜好用大麻においては、アラスカ州、アリゾナ州、コロラド州、ワシントン州など計15州で合法化されています。またオランダでは、2003年から医療用大麻が合法化*1されています。
昨今、国際的に大麻に関する規制の分類が変更され、大麻の医療上の有用性が認められるようになってきているというわけです。
今回の法改正で、大麻及びその有害成分であるテトラヒドロカンナビノール(以下、THC)に関しては、麻薬及び向精神薬取締法(以下、麻向法)における麻薬の一つとして位置付けられました。その関係で大麻草から製造されたTHCを含有する医薬品は、「麻薬」として大麻取締法及び麻薬及び向精神薬取締法の免許制度の下で適正な管理や流通、使用などが可能となりました。医療現場でも医師の管理下でのみ使用することができるようになり、現在では、大麻草から製造された医薬品である「エピディオレックス」について、国内で治験が開始されています。
*1 :オランダでは嗜好用大麻は違法ですが、5グラム以下の大麻の所持に関しては非刑罰化されています。
大麻等の施用罪の適用等に係る規定の整備
こちらは2つの内容に分けて解説していきます。
1つ目、保健衛生上の危害発生防止のため、大麻草由来製品に微量に残留するTHCの残留限度値が設定されました。また、大麻草由来の成分のうち、化学的変化により容易に麻薬を生じ得る一部の成分については麻薬とみなされるようになりました。
2024年12月12日以降、THCの含有量が残留限度値を超えて検出された製品は、「麻薬」として規制されます。なお麻薬でないことを証明するためには、「成分分析書」を作成しておく必要がありますので、次のマニュアルや記入事項を確認してみましょう。
【参考資料】
・CBDオイルなどのCBD製品関連製品の輸入について
https://www.ncd.mhlw.go.jp/cbd.html
・成分分析マニュアル
https://www.ncd.mhlw.go.jp/dl_data/cbd/cbdtebiki_20241212.pdf
・CBDオイル等のCBD関連製品の区分及び具体例
https://www.ncd.mhlw.go.jp/dl_data/cbd/kubun_example_20241015.pdf
◯成分分析表記入事項◯
a.輸入しようとするCBD関連製品の主成分や含有成分の分析結果を含む成分一覧
b. 輸入しようとする製品の形状の分類 1:油脂 2:粉末 3:水溶液 4:その他
c.分析日又は成分分析書作成日
d. ロット(バッチ)番号など、輸入しようとする CBD 関連製品が特定できる番号
e. 分析を行った施設の責任者の署名及び肩書き(役職名)
f. 分析方法(例:LC-MS/MS、LC-QTOF-MS 等)
g. 定量限界値(LOQ:Limit of Quantification)及び検出限界値(LOD:Limit of Ditection) ※LOQ・LOD 両方の値を記載すること
2つ目、大麻等の不正な使用については、禁止規定や罰則を受けることになります。また、大麻の不正な所持、譲渡、譲受、輸入等についても、大麻取締法及び麻薬及び向精神薬取締法における規制・罰則が適用されます。(7年以下の懲役刑)
警視庁の大麻事犯による検挙人員の資料を確認してみると、令和元年では「4,321人」に対して令和5年では「6,482人」とこの5年間で約1.5倍も増えており、大麻による危険性が身近にあることがわかります。
以前は、大麻の使用について禁止規定及び罰則が設けられていませんでした。
その影響で大麻に使用罪がないことが使用へのハードルを下げているという調査結果も出ています。さらに、その所持に関する証拠が十分ではない場合、 大麻の使用を取り締まることができないことも使用へのハードルを下げる要因の一つと考えられます。
部位規制から成分規制に
これまで大麻は、使用する部位で規制されていました。
【これまでの規制範囲】
◯規制対象(THC(Δ9-テトラヒドロカンナビノール))
花穂、葉、未成熟の茎、成熟した茎から分離した樹脂、根
◯規制対象外(CBD(カンナビジオール))◯
種子、成熟した茎(樹脂を除く)
しかし、近年注目を浴びている、麻薬成分ではない大麻草由来製品(例:CBD製品)に関しては、葉や花穂から抽出されたものも流通及び使用が可能となります
【参考資料】
神奈川県衛生研究所:大麻の基本的な知識と大麻由来製品の注意点について
ただしここで注意が必要です。1つ目の項目でもお伝えしましたが、保健衛生上の危害発生防止という背景から、大麻草由来製品に微量に残留するTHCの残留限度値が設定されました。
これは、THCが部分規制から成分規制に変更したということになります。
具体的には、THC残留限度値を超えるCBD製品は「麻薬」の扱いとなり、取締りの対象になりますので、その可能性がある製品をお持ちの方はお近くの麻薬取締部にお問い合わせください。
1:油脂(常温で液体のもの)、粉末 10ppm | 想定される製品の例 CBDオイル、ヘンプシードオイル、 化粧オイル等【植物油】 CBDパウダー、プロテイン等【粉末類】等 |
2:水溶液 0.1ppm | 想定される製品の例 清涼飲料水、アルコール飲料、化粧水等 【アルコール水溶液を含む水溶 液】 牛乳、植物性の飲料等【コロイド溶液】 等 |
3:その他 1ppm | 菓子類、錠剤、バター等【固形物全般】 電子タバコ等【グリセリンと脂肪酸が結合した化合物、水を含まない有機溶媒製品】 シャンプー、リンス、乳液、クリーム、マヨネーズ、バーム、ドレッシング等 【粘性が高い、若しくはグリセリンと脂肪酸が結合した化合物の含有率が高い、又はその 両方の水との混合物】 ゼリー等【ゲル状でグリセリンと脂肪酸が結合した化合物を含まない半固形物】 等 |
・ 油 脂:グリセリンと脂肪酸が結合した化合物を90%以上(※1)含むもの
・ 常 温:15~25℃
・ 液 体:流動的で一定の形状を持たないもの
・ 粉 末:日本薬局方における粗末以下の粒度のもの
・水溶液:水に物質を溶解させた液又は分散させた液(粘度100mPa・s未満(※2)かつグリセリンと脂肪酸が結合した化合物 の含有率10.0 %未満(※3)のものに限る。)
(※1),(※2)一の位を四捨五入する。 (※3)小数点第一位を四捨五入する。
※全ての製品は、常温における状態で区分を判断する。
(例)氷菓のように、凍結された状態で販売されている製品であっても、常温において液 体となるものは、液体となった状態で判断。
※混和せず、容易に分離できるものについては、分離したもので区分を判断する。
(例1)カプセルのように、粉末や液体を皮膜内に充填させたもの等は、その内容物で判断。
(例2)シート化粧品のように、不織布に液体を浸潤させたもの等は、その液体で判断。
大麻草の栽培に関する規制の見直しに係る規定の整備
大麻取締法は、主として大麻草の栽培規制に関する法律となるため、「大麻草の栽培の規制に関する法律」に変更となりました。大麻草栽培にあたっては特別な免許が必要とされているのですが、大麻取締法の改正によって、大麻草の栽培に関する免許区分が整備されました。
名称 | 目的 | 免許権者 |
第一種大麻草採取栽培者 | 大麻草から製造される 製品の原材料の採取 | 都道府県知事 |
第二種大麻草採取栽培者 | 医薬品の原料の採取 | 厚生労働大臣 |
大麻草研究栽培者 | 大麻草の栽培を伴う研究 | 厚生労働大臣 |
アスリートもTHCには要注意!
ここからはアスリートが注意するべきポイントをまとめていきます。
THCは、2025年禁止表国際基準2025年禁止表国際基準によると、「競技会(時)に禁止されるこの分類におけるすべての禁止物質は特定物質である」とされています。
このセクションの濫用物質は、次のとおりです。
・ THC 全ての天然および合成カンナビノイド
・ 大麻由来物質(ハシシュおよびマリファナ)及び大麻製品
・ 天然及び合成テトラヒドロカンナビノール(THCs)
・ THCの効果を模倣する合成カンナビノイド 等
例外で、CBDがドーピング禁止物質から除外されます。
CBDは、スポーツ前に摂取することで、適度にリラックスし競技に集中することや抗炎症作用や鎮痛作用があると言われています。また、スポーツ後に摂取すると体の痛みや疲れを軽減する効果が期待できます。
アスリートにとって便利な製品ですが、THCは法改正により、THC残留限度値が設定され、CBD製品の中には、過去にTHCが検出された製品もありドーピングにも注意が必要です。
パフォーマンスを向上するために取り入れたものも、場合によってはドーピングのリスクを上げてしまいます。一度、使用する前にスポーツファーマシストに問い合わせてみると良いかもしれません。
本コラムでは、法律改正のポイントを中心に解説しました。現在スポーツ界で注目されているCBD製品を使用する際にはTHC残留限度値に注意する必要があります。アスリートの方の中でCBD製品を使用する方は増加傾向です。ぜひ注意してください。
【参考資料】
2025年禁止国際基準
https://www.playtruejapan.org/entry_img/2025_prohibited_List_jpn.pdf
JADA資格停止処分について
BSCG認証CBDオイル:JOY SPORTS
大麻成分THCを含有する製品について
大麻取締法改正について①
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_43079.html
大麻取締法改正について②
https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/001302615.pdf
新旧対象条文
https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/001302632.pdf
政府広報オンライン
https://www.gov-online.go.jp/article/202412/entry-6856.html
警視庁:大麻対策のためのポータルサイト
https://www.npa.go.jp/bureau/sosikihanzai/yakubutujyuki/illegal_cannabis/index.html
大阪府警察:危険ドラッグ
https://www.police.pref.osaka.lg.jp/seikatsu/yakubutsuranyo/6896.html

【記事の執筆】大西 伴幸(薬剤師 / JADA公認スポーツファーマシスト / 漢方認定薬剤師 / スポーツ栄養アドバイザー等)
愛媛県松山市出身。2015年に松山大学薬学部を卒業。
2016年に大手チェーン薬局で管理薬剤師や在宅医療推進チームで活動した後、2021年に松山に戻る。松山の薬局で在宅医療に携わる中で薬局業界では当たり前のことが世間では浸透していないことを知り、薬剤師の機能を地域住民に知ってほしいと思うように。2024年8月から活動に幅を持たせるため、Start nowを開業。地元に愛される薬局の開業を実現するために、地域に飛び出している。
スポーツの分野に関してはスポーツファーマシストとして、プロアマ問わずアンチ・ドーピングセミナーを2025年1月までに30本開催しており、アンチ・ドーピングだけでなくアスリートコンディショニングの重要性をアスリートに伝えている。