サプリメントのGMP義務化とは?アスリートのサプリ選びにどう影響?

【GMP制度見直しで広がる「品質管理」という視点】サプリメントのGMPって、自分にも関係あるの?
2026年9月から、機能性表示食品制度が新たな段階に入ります。
「GMP」という言葉を聞いても、「製造する会社の話で、自分にはあまり関係ないのでは?」と感じた方も多いのではないでしょうか。
実際、競技者やサプリメントを利用する方が気になるのは、「品質管理」という言葉そのものよりも、「これまでと何が変わるのか」「自分がサプリメントを選ぶときに、何を知っておけばよいのか」といった点かもしれません。
そこで今回は、サプリメントだからこそ品質管理が重要とされる理由や、制度の見直しによって何が変わるのかを整理しながら、競技者が製品を選ぶ際に知っておきたいポイントを分かりやすく解説します。
GMPとは?
GMP(Good Manufacturing Practice)は、製造管理・品質管理の基準です。原材料の受入れから製造、包装、出荷までの各工程を適切に管理し、できるだけ一定の品質の製品を継続して製造することを目的としています。
GMPで重要な3つの観点
- 各製造工程における人為的な誤りの防止
- 製品そのものの汚染及び品質低下の防止
- 全製造工程を通じた一定の品質の確保
つまりGMPは、人為的なミスや異物混入、品質のばらつきなどを防ぐために、製造工程全体を管理する仕組みです。医薬品では以前からGMPが義務付けられていますが、サプリメントでは事業者による自主的な取組みとして進められてきました。つまり、GMPそのものは新しい仕組みではありません。

今回見直されるのは、サプリメントにおけるGMPの位置付けです。この点を理解しておくと、今回の制度見直しの目的も分かりやすくなります。
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サプリメントだからこそ品質管理が重要な理由
サプリメントを利用している方の中には、同じ製品を毎日続けて飲んでいるという方も多いのではないでしょうか。一般的な食品では、季節や産地によって味や大きさ、含まれる成分に多少の違いがあることは珍しくありません。私たちは、そのような違いを自然なものとして受け入れています。
一方、サプリメントは、ビタミンやミネラルなどの特定の成分を濃縮・加工し、錠剤やカプセルなど一定量を継続して摂取することを想定した食品です。毎日同じように摂取するものだからこそ、毎回できるだけ同じ品質であることが重要になります。
厚生労働省も、サプリメントのような錠剤・カプセル剤等食品では、製造工程によって品質に影響が生じる可能性があるため、製造管理・品質管理を適切に行うことが重要であるとしています。
例えば、
- 原材料の品質にばらつきがある
- 計量や混合が適切に行われない
- 他の原材料が混入する
- 保管や包装が適切に管理されない
こうした工程のどこか一つでも適切に管理されなければ、製品の品質に影響する可能性があります。だからこそ重要になるのがGMPです。製造工程全体を適切に管理することで、一定の品質を維持することにつながります。
制度はどう変わる?
ニュースなどでは、「サプリメントにGMPが義務化」と紹介されることがありますが、正確には少し異なります。制度の詳細については、消費者庁が公開している「機能性表示食品制度に関する説明会」資料でも紹介されています。
今回の制度見直しでは、機能性表示食品のうち、天然抽出物等を原材料とする錠剤・カプセル剤等の対象製品について、GMPに基づく製造・品質管理が制度上求められるようになります。錠剤やカプセル剤などの健康食品については、これまでもGMPに関するガイドラインが示され、事業者による自主的な品質管理の取組みが進められてきました。
また、特定保健用食品についても、天然抽出物等を原材料とする錠剤・カプセル剤等の対象製品では、GMPに基づく製造・品質管理が制度上求められます。
つまり、今回の制度見直しは「これまで品質管理が行われていなかった」ということではなく、従来は自主的な取組みとして行われてきたGMPによる品質管理が、一部の対象製品では制度上求められるようになった、と捉えると分かりやすいでしょう。

【ミニコラム】HACCPとは?
GMPとあわせて、「HACCP」という言葉を目にすることがあります。HACCPとは、Hazard Analysis and Critical Control Pointの略で、「危害要因分析重要管理点」と訳されます。2021年6月1日から、原則としてすべての食品等事業者にHACCPに沿った衛生管理が求められるようになりました。HACCPによる衛生管理では、工程ごとにあらかじめ危害要因を分析し、特に重要な工程を重点的に管理し、製品の安全性を確保していきます。
また、今回の制度見直しでは、GMPに加え、健康被害情報の報告体制の見直しなども進められています。 これは、機能性表示食品制度全体の信頼性を高めるための見直しです。 今回の制度見直しは、対象製品における品質管理の取組みを制度として強化するものです。 品質管理の仕組みは強化されますが、それだけで競技者が確認すべきことがすべて満たされるわけではありません。 では、競技者(アスリート)はGMPをどのように考えればよいのでしょうか。
GMPだけでドーピングリスクは回避できるのか?
品質管理とアンチ・ドーピングは、どちらも大切ですが、「何を守るための仕組みか」が異なります。GMPは、製品の一定の品質を維持するための仕組みであり、アンチ・ドーピング上の安全性を保証する制度ではありません。
一方、アンチ・ドーピングでは、「競技者が体内に取り入れるものすべてに責任を持つ」という考え方(※Strict Liability:厳格責任)が基本となっています。そのため、意図的な使用でなくても、ドーピング禁止物質が体内から検出された場合には、競技者自身が責任を問われることがあります。この考え方は厳しく感じられるかもしれません。しかし、クリーンスポーツを守るための基本原則として、世界共通のルールとなっています。
前回の記事(「サプリメントによるドーピングはなぜ起きる?」)でも紹介したように、サプリメントによるドーピング違反は、表示されていないドーピング禁止物質の混入など、さまざまな要因で起こる可能性があります。そのため、競技者にとっては、GMPだけで製品の安全性を判断したり、アンチ・ドーピング上のリスクを回避したりできるわけではありません。成分表示や第三者認証、必要に応じた分析情報なども組み合わせながら、総合的に判断することが、ドーピングリスクの低減につながります。
競技者は品質管理をどう判断に活かせばよいか

今回の制度見直しによって、「品質管理」という視点は、これまで以上にサプリメント選びで意識したいポイントの一つになりました。
一方で、現時点ではGMPへの対応状況はメーカーの品質管理ページなどで紹介されていることが多く、商品パッケージや商品ページだけでは分かりにくいのが現状です。メーカーが品質管理への取り組みをどのように公開しているかを確認することは、その製品づくりに対する姿勢を知る手掛かりになります。
もちろん、それだけで競技者が必要な情報をすべて確認できるわけではありません。
成分表示や第三者認証、必要に応じた分析情報などもあわせて確認し、迷ったときはスポーツファーマシストなどの専門家へ相談することが大切です。競技者がサプリメントを選ぶ際には、ドーピングリスクだけでなく、製品そのものの品質や安全性についても意識することが大切です。GMPへの対応状況は、メーカーがどのように製造・品質管理に取り組んでいるかを知るための判断材料の一つになります。
サプリメントを選ぶときのチェックポイント
今回の制度見直しによって、サプリメントの品質管理はこれまで以上に重視されるようになります。利用者にとっても、「品質管理」という視点を持つことで、これまでより多くの情報をもとに製品を選べる環境が少しずつ整っていくでしょう。

制度を正しく理解することは、競技者自身の判断を支える"味方"にもなります。まずは、手元にあるサプリメントから見直してみませんか。
【参考文献】
・消費者庁食品衛生基準審査課.サプリメントに関する規制の現状.2025年11月27日.
・公益財団法人日本スポーツ協会 スポーツ医・科学委員会.サプリメント利用・活用コンセンサス2024 解説書.2024年.
・公益財団法人日本アンチ・ドーピング機構(JADA).アンチ・ドーピングとサプリメント.
・サプリメント認証枠組み検証有識者会議.スポーツにおけるサプリメントの製品情報公開の枠組みに関するガイドライン.2019年3月31日.
・HACCPによる衛生管理とは_公益社団法人日本食品衛生協会
記事の執筆

薬剤師/公認スポーツファーマシスト 猪股 杏菜(いのまた あんな)
【プロフィール】薬剤師/公認スポーツファーマシスト。医療・
