2024年に起きた「紅麹」問題。この問題を受けて、国は機能性表示食品に関する制度を改めました。そして、この問題を機に今、日本のサプリメントに関する安全性が問われています。今回は一般社団法人日本健康食品規格協会の池田秀子氏に、「日本のサプリメントGMPの現状と課題」関して二回にわたり解説していただきます。 まずは日本のサプリメントGMPの現状と課題(前編)です。

はじめに

昨年(2024年)の小林製薬㈱の紅麹含有健康食品による死亡例を含む健康被害は、社会問題となり、健康食品に対する消費者の信頼を大きく損なう事となった。原因製品が、「機能性表示食品」であったことから、国は機能性表示食品に対して、以下の制度改正を行い、1と2については、特定保健用食品(以下、「トクホ」と称す。)にも適用されることとなった。

1:健康被害情報の届出の義務化
2:錠剤、カプセル剤等の製品(以下、サプリメントと称す。)に対するGMPの義務化
3:届出情報の表示方法の見直し(製品への表示方法の見直し)
4:120日ルールの新設(新規成分に係る評価手続きのため、販売前届出を60日→120日)

このように、サプリメントに対していよいよGMPが義務化されたのだが、「これでサプリメントは安心!」と油断してはならない。まず、どのサプリメントにGMPが義務化されたのかを確認してみよう。

参照:機能性表示食品について_消費者庁HP

健康食品及びサプリメントとGMP

日本には「健康食品」や「サプリメント」についての法律上の定義がない。そのため、国は「いわゆる健康食品」と呼ぶことにしているのだが、「健康食品」には、実は二種類の食品が含まれている。一つは、健康の維持・増進、あるいは人の身体の構造や機能に対して何らの有益な作用をもたらすことを表示して販売されている食品であり、もう一つは、健康を維持するという事以外は、前者のような作用を全く表示する事が認められていないが、何らかの効果を期待して摂取されている食品である。

前者は、そのような表示をすることが法律で認められており、「保健機能食品」として区分され、これには、「トクホ」「栄養機能性食品」と「機能性表示食品」が含まれる。簡単に説明すると、トクホは国による審査を経て機能性を表示する、「許可制」である。栄養機能食品はビタミン、ミネラル、n-3系脂肪酸について、国が定めた要件に適合すれば、国が定めた通りの機能性の表示ができることから、事業者による「自己認証制」をとっている。機能性表示食品は、事業者が全ての責任を負う事を条件に、国に届出をして、科学的根拠に従って機能性表示をする「届出制」である。

一方、後者の機能性に関する表示が全く認められない健康食品は、生鮮食品や通常の加工食品と同じ、一般食品として扱われており、「その他のいわゆる健康食品」という呼び名が与えられている。従って、「いわゆる健康食品」は四種類からなる小区分を含んでいることになる。
大事なのは、これらの全ての健康食品の区分に「サプリメント」が存在するが、今回、GMPが義務化されたのは、機能性表示食品とトクホだけであるという点である(図1)。

記事の執筆

池田秀子/一般社団法人 日本健康食品規格協会 理事長

北里大学薬学部卒業後、東京田辺製薬株式会社に入社。株式会社ソフィアテック東京田辺を経て、 2003年に有限会社バイオヘルスリサーチリミテッドを設立し、2013年より取締役社長就任。 2005年に、一般社団法人 日本健康食品規格協会を故・大濱宏文 理事長らと設立し2013年より理事長就任し、現在に至る。

【その他活動】
在日米国商工会議所 栄養補助食品規制緩和サブコミッティ委員(1994-2005):栄養補助食品の規制緩和要請、 一般社団法人日本臨床栄養協会 副理事長、一般社団法人日本食品安全協会 理事、IADSA(国際サプリメント業界団体連合会)科学者会議委員、ISO/TC249(国際化標準化機構 Traditional Chinese Medicine専門委員会)国際委員

【専門分野】
海外のサプリメント制度の研究(ヘルスクレーム、安全性及び品質確保に係る制度研究)

【所属学会】
日本薬剤師会、日本公衆衛生学会、日本臨床栄養協会、日本臨床栄養学会、 日本食品化学学会、日本健康科学学会、日本栄養改善学会、ゲーテ自然科学の集い、 日仏美術史学会、歴史学会、公益財団法人生存科学研究所

【主な論文・著書】
・Health Foods and Foods with Health Claims in Japan (“Nutraceutical and Functional Food Regulations in the United States and Around the World.” Ed. by Debasis Bagchi) Elsevier (第3版2019年) 共著
・食品の機能性表示と世界のレギュレーション、薬事日報社(2015) 編集・監訳(共著)
・学名でひく食薬区分リスト-健康食品・医薬品に区分される成分-、薬事日報社(2014)共著、 
・NR・サプリメントアドバイザー必携(第6版)、第一出版(2023) 共著、他多数